舌下免疫療法
舌下免疫療法
アレルゲン免疫療法は、アレルゲン※1を低濃度から体内に取り込み、徐々に濃度を上げていき、慣れさせることで体質改善を目指す治療法です。薬物治療(対症療法)とは異なり、根本的にアレルギーを治療する方法として注目されています。従来から注射による皮下免疫療法が行われていましたが、アナフィラキシー※2などの副反応、頻回な通院、そして毎回注射の痛みも伴います。このような皮下免疫療法の負担を軽減した治療法が、舌の下に治療薬を投与する舌下免疫療法です。これにより、ご自宅での服薬で免疫療法が行えるようになりました。
舌下免疫療法は1980年代に海外で開始された治療法で、日本では2014年にスギ花粉症で初めて保険適用となり、翌年の2015年には、ダニを原因とする通年性アレルギー性鼻炎も保険適用となりました。このため現時点での日本における舌下免疫療法の適応は、スギ花粉またはダニが原因となるアレルギー性鼻炎と診断された方で、薬物療法でアレルギー性鼻炎の症状やQOL(生活の質)を十分にコントロールできない方、あるいは、アレルギー性鼻炎の臨床的寛解※3をご希望される方、となっています。
一方、重症喘息などを合併する方は受けられず、高血圧(ベータ遮断薬)を服用している方、治療開始時に妊娠している方も控えるべきとされています。
アレルギー性鼻炎は、スギ花粉などによって引き起こされる季節性アレルギー(花粉症)と、ダニやハウスダストなどによって引き起こされる通年性アレルギーに大別されますが、どちらも混在していることもしばしばあります。症状は季節性・通年性のいずれも、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみ、充血などです。一般的な治療としては、原因が特定できる場合は、可能な限り原因の回避と除去(こまめな掃除など)を行います。アレルギー性鼻炎の薬物療法は広く行われており、症状や重症度に応じて抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイド薬などを用います。
根本的な観点からアレルギーを治療する舌下免疫療法は、スギ花粉症、ダニアレルギー性鼻炎ともに5歳以上から治療対象となります。通年性のダニアレルギー性鼻炎は、一年を通して治療できますが、スギ花粉症の場合、スギ花粉が飛散する時期は治療できず、飛散が終わる6月以降から治療を開始できます。
舌下免疫療法は、治療期間は3~5年と長期にわたりますが、ご自宅で服用できるため継続しやすいといったメリットがあります。長期的に正しく治療することで、症状を完全に抑えたり、症状を緩和しアレルギー治療薬を減らせたりする効果が期待できます。
毎年、スギ花粉の飛散期に、くしゃみ、鼻のかゆみ、鼻水、鼻づまり鼻症状が認められ、時として目のかゆみなどを伴う場合、スギ花粉症が疑われます。これらの所見に皮膚テストあるいは特異的IgE検査の結果を組み合わせて診断します。さらに鼻汁好酸球検査が陽性であれば診断の精度が高まります。
通年性のくしゃみ、鼻のかゆみ、鼻水、鼻づまりの典型的な鼻症状が認められ、目のかゆみなどの眼症状、咳、喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難などの喘息症状などを伴う場合、ダニアレルギー性の可能性が考えられます。これらの所見に皮膚テストあるいは特異的 IgE検査の結果を組み合わせて診断します。
治療は3~5年継続する必要があります。長期間かけて体をアレルゲンに慣らし、免疫力を高め体質を改善する治療とお考えください。
スギ花粉症では、治療を開始してはじめて迎えるスギ花粉飛散のシーズンから、ダニアレルギー性鼻炎では、治療を開始して数ヶ月後から効果が期待できます。年単位の治療継続で最大の効果が得られると考えられています。
※ただし、すべての患者さんに同様の効果が期待できるわけではないことをご了承ください。
1日1回、少量の治療薬から服用をはじめ、増量期を経て、決められた一定量を数年間継続していただきます。初日の服用は、当院で医師の監督のもと行い、2日目からはご自宅で服用いただきます。基本的に、1ヶ月に1回受診いただき、副作用や治療効果などを確認させていただきます。
治療薬を舌の下に置き、薬ごとに定められた時間を経過した後に飲み込みます。
その後5分間は、うがい、飲食を控えます。また、運動や入浴は2時間程度避けるようにします。
スギ花粉症の場合、スギ花粉の飛散時期はアレルゲンに対する体の反応性が過敏になっているため、新たに治療をはじめることはできません。一方、ダニアレルギー性鼻炎の場合は、時期に関わらず治療をはじめることができます。
スギ花粉とダニの両方に対してアレルギーがある方は、治療は並行して可能ですが、同時に開始することはできません。まず、どちらかを開始して、症状が安定してからもう一方の治療を開始します。いずれの場合におきましても、適切な開始時期を提案させていただきます。
スギ花粉症、ダニアレルギー性鼻炎の治療対象年齢は、いずれも5歳以上です。
長期にわたりアレルギー性鼻炎の症状を抑える効果が期待できます。症状が完全に抑えられない場合でも、症状を緩和し、アレルギー治療薬の減量が期待できます。
舌下免疫療法では重篤な副作用が発生することは稀とされており、軽微な症状としては、次のようなものが報告されています。ほとんどが一時的なものですが、もしこのような症状が出現し、治まらない場合はすぐに受診してください。
私が花粉症を発症したのは、2005年の春でした。最初は「まさか、自分が花粉症だなんて」と認めたくありませんでしたが、目は痒くて真っ赤か、鼻水はズルズル、鼻がつまって眠れないという、これぞ花粉症!という症状により、花粉症だと認めざるを得なくなりました。それからは、内服薬+点鼻薬+点眼薬+マスク+ゴーグルという5点セットが必要になりました。
好きな季節だった春の訪れが鬱陶しくなり、家の窓は開けられず、外に出るのも嫌になり、お花見なんてもっての外に。外出時はマスクにゴーグルのため、娘に「怪しい人みたい」と言われ・・・。気持ちの良い季節が、花粉のために一転してしまいました。
こんな状況から、何とか抜け出せたらと2016年の10月から、舌下免疫療法を始めました。
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2016年10月「なんとか抜け出せたら…」
舌下免疫療法スタート
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2017年春(1年目)「本当に効いてるの?」
まだ半信半疑。治療を始めてからまだ数ヶ月だったため、あまり実感できる効果は残念ながらありませんでした。この頃はまだ、5点セットが必要でした。
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2018年春(2年目)「お!? 効いてる!?」
まだ少し半信半疑。でも、いつもより楽になり、内服薬+点眼薬+マスクの3点セットに。点鼻薬とゴーグルは必要なくなりました。
3
2019年春(3年目)「お~~‼効いてる‼」
と効果を実感。今年は、点眼薬を数日使っただけです。内服薬も不要になりました。マスクは…なんとなくしています。気持ちの良いあの春が、戻って来ました!
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2020年春(4年目 舌下免疫療法終了)「楽~!」
この年の私の今年の感想は「楽~!」の一言で、「花粉飛んでるの?」と思う日々でした。目が少し痒くなることが数日あった位で、内服薬は、今年も一度も飲まずに過ごせました。
ただ、楽さ加減は去年からすごくアップした感じではなく、ほぼ治療効果のゴールに達したのかなという感じでした。そこで、舌下免疫療法をGW前に終了して、来シーズンを迎えてみることにしました。約4年半にわたる治療でしたが、自分としては期待以上の効果だったと感じています。
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2021年春(舌下免疫療法終了1年後)「飛散量が多く少し症状が…」
舌下療法を止めてから初めて迎える今シーズン。今年は、2月下旬の花粉シーズンの初めに多くの飛散がありました。そのため、目の痒みと鼻水の症状が出てしまい、シーズン初めにこれだと去年より辛くなりそうだったので、止めていた舌下療法を再開することに決めました。ところが、その後は多く飛散する日は続かず、症状も去年と同程度になったため舌下療法は直ぐに中止することに。今シーズンは、全体としては去年と同じくらいで点眼薬を数回使うだけで過ごすことが出来ました。
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2022年春(舌下免疫療法終了2年後)「今年も楽!」
舌下療法を止めて2年目。今年も楽に過ごせました。飲み薬は1回も飲まず、目薬を2~3回使っただけでした。
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2023年春(舌下免疫療法終了3年後)「ぜひおすすめしたい!」
今年も花粉のシーズンが始まりました。2月に入ってから花粉症の症状で受診する方が増えています。私には、舌下療法を止めて3年目の春です。とりあえず目薬だけ準備しました。
スギ、ダニのアレルギーでお困りの方には、舌下免疫療法をぜひお薦めします‼